宮沢賢治

宮沢賢治は鳥シャーマン?

宮沢賢治は鳥シャーマンである…この考えは、鎌田東二によるものです。
神道のスピリチュアリティ鎌田東二著 とか参考に…。
宮沢賢治は、シャーマンやトーテム*1といった当時ではあまり使われていなかった、新しい民俗学の言葉をよく使っていた。
宮沢賢治の作品は、鳥を思い起こされるものが多い。文学作品だけではない。

 あるとき、奇妙なことを思いつき、それを実行に移した男がいた。それは、田んぼの真ん中に花壇を作るという思いつきだった。男は楽しげにそれを作り上げ周りの者はそれを見てただ呆れ返るばかりであった。
 田んぼの中に実現した目の覚めるような華やかな花壇。日本の稲作史上にシュールな夢のごときイメージを現実にしてみせたこの男の名は、宮沢賢治。覚醒と酩酊が奇妙に同居し、さらなる心身の変容をもたらしたこの男の不思議な酩酊感覚には鳥のメッセージが脈打っている。田んぼの中の花壇をいち早く感知するのは鳥の目だからだ。賢治を襲う鳥的酩酊のさまを見てみることとしよう。
エッジの思想―翁童論〈3〉イニシエーションなき時代を生きぬくために (ノマド叢書) p42から抜粋して引用

他にも、先生時代に、何かインスピレーションが浮かんだ時、「ホホーッ」と叫んでジャンプしたというエピソードがある、これも、テレビでかつての生徒が再現しているのを見たことがあるが、鳥そのもののようだった(今思うと)。
(このエピソードは、上で引用している本にも書かれています。)

隠し念仏の徒

隠し念仏とは、迫害された浄土真宗をひそかに信仰していた秘密結社的存在。東北の信仰で、九州にも隠れ念仏という似たようなものがある。宗教は違うが、隠れキリシタンと似たような点が多いらしい。宮沢賢治も子供のころこの隠し念仏の徒であったのではないか?
ひそかに伝わっていたもので、口外してはならない存在だったが、阿伊染徳美(画家)によって本にされる。わがかくし念仏
隠し念仏の儀式で、5,6歳くらいの時、松の葉の芯をのぞいて「ターツケターマエーッ」と言いながら息を吐き続けふらふらになるほどまで息を吐いた後、息を吸い込むとき仏が口から入ってくるとされる業があるらしい。一種のトランス状態を作り出していると思われる。
霊性の文学誌鎌田東二著『鬼と鹿と宮沢賢治 (集英社新書)』門屋光昭著 参考

贈与とエロティック

この話を聞いて、『松の針』の

おまへの頬の けれども
なんといふけふのうつくしさよ
わたくしは緑のかやのうへにも
この新鮮な松のえだをおかう
いまに雫もおちるだらうし
そら
さはやかな
terpentin*2の匂いもするだらう
『松の針』宮沢賢治全集 Ⅰ より抜粋して引用

の部分を思い出した。
死にゆく妹についてかいたものです。
賢治の妹に対する感情はなみなみならないものだったでしょう。愛といってはだめなのかもしれないですが、そこのはエロスがあります。
中沢新一は、宮沢賢治のことを贈与する人であると言います。
そして贈与とはエロティックなものであるのです。

商品の交換には、人と人との魂の交換がなされません。これは贈与とは違います。贈与とは魂の交換がなされるものです。その魂の交換を切り離す「ロゴス」があるために魂の交換がなされませんそれによって人と人との結びつきがおこらないために、幸福の拡大といったものがない…

 ところが贈与は、そのような拡大を実現しようとするのです。贈与は人々を結びつける力によって、働きを行います。つまり、それは「エロス」の力によって働くのです。何の見返りを求める事もなくおこなわれる贈与は、相手の気持ちに、お返しをしなくては、という負担を作り出すことがありません。送り与えられる物は、魂と魂のあいだに、エロティックなひとつの通路をつくりだします、そのとき、贈られる物といっしょになって、それを贈る人の魂が、贈られた人の魂の中に、侵入をはたすからです。ここでは、偽善はありません。「エロス」は、小さな自愛の鎧を、打ち砕く力があって、純粋な贈与への欲望にうながされてあるとき、人は他者に対する免疫抗体のメカニズムを、解除しています。そして、そのような無防備な状態にある魂が、贈与物を通じて、自分とエロティックな結合を作り出そうとしているのをしているのを知るとき、それを受け取る人の魂も、ほがらかな喜びを体験する事になるのです。
哲学の東北 (幻冬舎文庫) p10より抜粋引用

このころの、見返りを求めない贈与という考え方が、後に中沢新一の言う、純粋贈与ですね。宮沢賢治は、このような純粋贈与を実際していたからこそ、神のようにあがめられることもあるんですね〜。しかしそのような不健康な贈与を繰り返していたからこそ病気になってしまったのかもしれません。

父と信仰

宮沢賢治は父という存在に対する抵抗が大きかった…質屋を営んでいて、浄土真宗の父に対抗して法華経に傾倒した。父親にも激しく改宗を求めています。
国柱会という日蓮宗国家主義ブレンドした新興宗教をたずねる、が、作家になることを勧められ、賢治は作家になったらしい。<参考>国柱会 http://park8.wakwak.com/~kasa/Religion/kokuchukai.html

宮沢賢治の感覚野

宮沢賢治はすごく感覚的に物事を捉えることに長けていたことは作品を見れば分かると思う。
宮澤賢治の詩の世界 ( mental sketches hyperlinked ): 岩手山と澱粉堆 アーカイブ←この記事を読んで改めて思った。


引用ばっかになってしまった…。
内容は、鎌田東二先生の授業のメモと引用とあと何かでした。

*1:トーテム…ある特定の動物を、自分たちと同一視し、あがめる考え方

*2:terpentin(ターペンテイン)テレビン油。松科の植物を蒸留して得た揮発性芳香を伴った液。宮沢賢治詩集 (ハルキ文庫)角川春樹事務所の語注より